ぽんすけ
作成日:2023-04-15 / 更新日:2023-04-15

業務委託契約の業務内容を代表的なパターン毎に例文で紹介

業務委託契約書における「業務内容」は、依頼内容の認識齟齬を防ぐため重要な項目です。

業務委託契約書とは何ですか?

業務委託契約は、委託者が受託者に対して、何らかの業務を委託する内容の契約です。 「業務委託契約」という用語自体は法律上の用語ではなく、委託する業務の法的な性質により、主に「請負契約」「委任契約(準委任契約)」「請負・準委任混合型」に分類されます。

以下のブログで、業務委託契約を分かりやすく解説しています。参考にご一読ください。

業務委託契約を分かりやすく解説

業務委託契約書が必要であれば、下記のリンクより、上記の内容で業務委託契約書の作成が可能です。

業務委託契約書作成

最近は副業の奨励により、企業間だけではなく、個人が仕事の依頼をうけて報酬をもらうことが一般的となってきました。 業務委託契約は、世間一般で契約される幅広い契約を示しており、すべてを説明するのは難しいため、 ここではフリーランスや個人事業主の方が契約する際に気を付けるポイントを紹介したいと思います。

請負契約と準委任契約における業務内容の違い

業務委託契約を分かりやすく解説でも説明した通り、 業務委託契約は、大きく「請負契約」と「準委任契約」に分かれます。

請負契約は、受託者が仕事を完成することを約束し、委託者がこれに対して報酬を支払う契約です。 そのため、納品する成果物は明確である必要があります。

準委任契約は、仕事の完成ではなく、一定の事務処理行為を行うことを約束する契約です。 成果物の納品はないため、時間や日割り、回数などで費用を決めるのが一般的です。

委託された仕事を行う上で、「契約不適合責任」と「善管注意義務」は押さえておきたいキーワードになります。

請負契約で重要な「契約不適合責任」とは

簡単に言うと、「納品物が不完全な場合、受託者が負う責任」になります。 もう少し補足すると、「契約の際に、あらかじめ成果物に対して取り決めた種類や品質、数量に関して、契約内容に適合しない引き渡しをおこなった場合につき、売主側で負担する責任」です。

昔は「瑕疵(かし)」と言われていましたが、2020 年 4 月より民法が改正され、瑕疵担保責任は契約不適合責任に名称が変更となりました。 この民法改正によって委託者保護の観点が強くなっています。

瑕疵担保責任では、委託者は、受託者に対し、原則として契約の解除又は損害賠償請求のみが可能でした。 これに対し、契約不適合責任では、契約の解除・損害賠償請求に加えて、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完請求、代金減額請求が可能となりました。

  • 瑕疵範囲 : 委託者が知っていた不備(瑕疵)についても「契約不適合責任」の対象になり得る
  • 損害範囲 : 「履行利益」が追加。実害だけでなく、本来履行されていれば得られていたと予想される利益のことです
  • 対抗措置 : 「履行の追完請求」と「代金減額請求」が追加。「完全な成果物の請求」や「契約に不適合なので減額してほしい」などの措置が取られます

準委任契約で注意が必要な「善管注意義務」とは

「善管注意義務」は略語で「善良な管理者の注意義務」が正式な名称です。

業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のことです。 注意義務を怠り、履行遅滞・不完全履行・履行不能などに至る場合は民法上過失があると見なされ、状況に応じて損害賠償や契約解除などが発生する可能性があります。 民法第 644 条に「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」とあります。

明確な成果物が規定されない準委任契約であっても、受託者は専門家としての義務が問われます。 そのため「このままだと問題が発生し得る」と分かっている場合は、委託者に伝える義務があります。

請負契約における業務内容の代表的なパターン

フリーランスで請負契約をする代表的な業務内容です。 業務内容の例文を紹介します。

  • 広告制作
  • アプリ・システム開発
  • HP・Web 制作

どの契約においても重要な点は、成果物の仕様を明文化し、委託者と合意することです。 その上で仕様を別添にします。

「仕様」を契約書に記載していなければ、委託者と打ち合わせで決定した内容で制作を完了しても、 委託者から、「XXXX も当然対象と思っていたが対象になっていない」と言われた際に、水掛け論になってしまいます。

契約書では、認識合わせした仕様を、以下に記載します。

仕様:別紙のとおり

このように「仕様」を「別紙」にすることで、打ち合わせの際に作成した資料をそのまま契約書に添付することもできますので覚えておきましょう。

広告制作

広告制作では、ポスターや折り込みチラシ等、委託者が指定する広告物を受託者が制作します。 広告制作では「媒体」「サイズ」「納品形式」「データの受け渡し方法」に注意が必要です。

また、ノベルティ制作も、広告制作と同じ業務内容で記載が可能です。

広告制作での例文

委託者は受託者に対して、以下の内容でポスター広告の制作を発注し、受託者はこれを請け負う。
仕様:別紙のとおり

受託者が制作時に必要な画像や原稿は委託者から提供する。
広告物は、検討案を2案制作し、委託者と受託者が協議の上、1案を採択する。
受託者は、採択した1案を印刷物およびデータ形式で委託者へ提供する。

広告制作での注意点

スマートフォンの普及により広告は多種多様な媒体、形式になっています。

国民生活センター:特集 ネット広告と消費者トラブル
参考 国民生活センター:特集 ネット広告と消費者トラブル

そのため、納品物のサイズや媒体(電子媒体/紙媒体)は事前に決めておく必要があります。 また電子公告の場合、様々なサイズがあるため「縦:760px、横:1024px」のように明確に規定する必要があります。 納品物が動画の場合は、データ容量も大きくなるため、あらかじめ受け渡し方法を決めておく必要があります。

アプリ・システム開発

アプリ・システム開発では、スマホアプリケーションや業務システムなど、業務委託者が指定するアプリケーションを受託者が制作します。 アプリ・システム開発では「仕様(機能・非機能)」「実行環境」に注意が必要です。

アプリ・システム開発での例文

委託者は受託者に対して、以下の内容でアプリケーションの制作を発注し、受託者はこれを請け負う。
仕様:別紙のとおり

受託者が制作時に必要な画像や原稿は委託者から提供する。受託者が動作確認時に必要な認環は、委託者が提供する。
また、本件アプリケーションは契約時点で最新のChromeにおいて正常に動作できるように制作する。
受託者が制作したアプリケーションは、AWS(Amazon Web Service)のEC2にて公開するものとし、AWSへの配置は委託者にて実施する。

アプリ・システム開発での注意点

別紙の「仕様」として、最低限、「Web サイトに搭載される機能の一覧」と、「Web サイトの画面レイアウト」をつけておきましょう。

最近は Web アプリケーションが主流ではありますが、業務用途によってはクライアントアプリケーションの委託もあります。 そのため利用用途・実行環境はあらかじめ明確にしておく必要があります。 また、仕様には性能やセキュリティなどの非機能面も、事前に明確にしておくことをお勧めします。

HP・Web 制作

HP・Web 制作では、ホームページや WEB サイト、ランディングページ等、業務委託者が指定する WEB サイトの制作を受託者が制作します。 HP・Web 制作では「素材提供」「仕様」「対応ブラウザ」「実行環境」に注意が必要です。

例文は以下の通りです。

HP・Web 制作での例文

委託者は受託者に対して、以下の内容でウェブサイトの制作を発注し、受託者はこれを請け負う。
仕様:別紙のとおり

受託者が制作時に必要な画像や原稿は委託者から提供する。
また、本件ウェブサイトはChromeおよびSafariの契約時点の最新バージョンにおいて正常に閲覧できるように制作する。
受託者が制作したウェブサイトは、AWS(Amazon Web Service)のS3にて公開するものとし、AWSへの配置は委託者にて実施する。

HP・Web 制作での注意点

「仕様」を契約書に記載していなければ、委託者と打ち合わせで決定した内容で制作を完了しても、 委託者から、「XXXX の機能も当然ついていると思っていたが実装されていない」と言われた際に、水掛け論になってしまいます。

別紙の「仕様」として、最低限、「Web サイトに搭載される機能の一覧」と、「Web サイトの画面レイアウト」をつけておきましょう。 このように「仕様」を「別紙」にすることで、打ち合わせの際に作成した資料をそのまま契約書に添付することもできますので覚えておきましょう。

また、制作するウェブサイトの仕様以外にも、制作に必要な素材や実行環境についても事前に明確にしておくことをお勧めします。

以下、契約後に発生する代表的な問題です。

  • 画像素材や原稿などのコンテンツ(原稿を制作会社が作成することになった)
  • スマホ対応(追加でスマホ対応を行うことになった)
  • OS やブラウザの対応(Internet Explorer や古い Android の OS への対応)
  • サーバーやドメインなどの環境設定(サーバーの選定・設定)

準委任契約における業務内容の代表的なパターン

フリーランスや個人事業主として準委任契約をする業務内容の例です。 比較的、小規模な企業に対する業務委託が多いかと思います。

  • システム保守
  • コンサルティング
  • 顧客向けアンケート
  • DM 発送

### 準委任契約の場合の例文

フリーランスや個人事業主として準委任契約をする場合は、下記の建付けで記載できます。 「1 本件業務の内容は、以下のとおりとする。」に委託内容を記載します。

1 本件業務の内容は、以下のとおりとする。
 ① …
 ② …
2 委託者は、受託者の求めに応じて、本件業務に必要な資料を開示し、または無償で提供する。
3 受託者は、善良なる管理者の注意をもって本件業務を行う。

システム保守

システム保守とは、システムを改修、調整、修理する作業のことです。 ただし、システムがどのようなミドルウェア(DB ベースやアプリケーション FW)を利用しているかにより 必要なスキルは異なるため、委託者の期待値を確認する必要があります。

例文を以下に示します。

1 本件業務の内容は、以下のとおりとする。
 ① システム上で発生したバグの改修
 ② システム障害の復旧作業
 ③ セキュリティパッチの検証と適用
2 委託者は、受託者の求めに応じて、本件業務に必要な資料を開示し、または無償で提供する。
3 受託者は、善良なる管理者の注意をもって本件業務を行う。

コンサルティング

コンサルティングは、受託者であるコンサルタントが、委託者であるクライアント(顧客)に、 専門的な知識経験、ノウハウといった情報を提供し、指導、助言、アドバイスする業務です。 体表的なコンサルティングテーマは以下になります。

  • 経営戦略
  • 財務・経営管理
  • 組織人事
  • M&A
  • SCM
  • CRM
  • IT・テクノロジー
  • システム導入
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)
  • リスク・セキュリティ
  • サステナビリティ(ESG)

例文を以下に示します。

1 本件業務の内容は、以下のとおりとする。
 ① クライアントの経営課題の解決に関するコンサルティング業務
 ② その他、これに付随する一切の業務
2 委託者は、受託者の求めに応じて、本件業務に必要な資料を開示し、または無償で提供する。
3 受託者は、善良なる管理者の注意をもって本件業務を行う。

顧客向けアンケート

顧客満足度調査は商品やサービスに対して、消費者がどれぐらい満足しているかを把握するために行われます。 どんな点に満足しているのか、満足度を下げている要因はどこにあるのかなどを洗い出して改善施策を導き出すのが目的です。 改善施策を導き出して、より顧客満足度を高めることができれば、再購入率や顧客単価のアップ、口コミによる新規顧客の増加なども期待できるようになります。

1 本件業務の内容は、以下のとおりとする。
 ① 調査対象となる顧客像の設定(ペルソナ設計)
 ② 質問項目設計(属性質問・総合満足度評価質問・詳細要因質問)
 ③ 顧客満足度調査の実施・結果分析
2 委託者は、受託者の求めに応じて、本件業務に必要な資料を開示し、または無償で提供する。
3 受託者は、善良なる管理者の注意をもって本件業務を行う。

DM 発送

DM(ダイレクトメール)発送とは、広告物の印刷や封入、宛名のラベル貼り、発送といった業務の一部または全部を代行する業務です。 DM 制作の企画から参入して、自社の商品やサービスの魅力が伝わる広告物の制作を手掛ける場合もあります。

1 本件業務の内容は、以下のとおりとする。
 ① 委託者より提供されたDM送付先名簿をもとに宛名ラベル作成
 ② 印刷物の封入・封緘および宛名ラベルの添付
 ③ 上記で作成した郵送物の発送
2 委託者は、受託者の求めに応じて、本件業務に必要な資料を開示し、または無償で提供する。
3 受託者は、善良なる管理者の注意をもって本件業務を行う。

まとめ

業務委託契約書は、依頼内容や報酬、期間などを記載し、当事者間の認識齟齬を防ぐ重要な書類です。 フリーランスや個人事業主として仕事を受託する際は、忘れずに作成するようにしましょう。