ぽんすけ
作成日:2023-04-09 / 更新日:2023-04-09

業務委託契約を分かりやすく解説

業務委託契約書は、依頼内容や報酬、期間などを記載し、当事者間の認識齟齬を防ぐ重要な書類です。

業務委託契約書とは何ですか?

業務委託契約は、委託者が受託者に対して、何らかの業務を委託する内容の契約です。 「業務委託契約」という用語自体は法律上の用語ではなく、委託する業務の法的な性質により、主に「請負契約」「委任契約(準委任契約)」「請負・準委任混合型」に分類されます。

請負

業務委託契約で委託する業務が何らかの「仕事の完成」を目的とする場合は、請負契約に該当します。

例えば、ホームページ制作や WEB 記事の執筆などの委託は、「ホームページ」や「WEB 記事」を完成させた上で、納品してもらうことが目的のため、請負型となります。

請負型では、受託者は「仕事を完成」する義務を負い、仕事が不完全な場合(ホームページや WEB 記事が完成していない場合等)には、債務不履行責任や契約不適合責任を負います。

委任・準委任

業務委託契約が、「何らかの法律行為(※1)の委託」を目的とする場合は、委任型に該当します。 一方、業務委託契約が、「何らかの事実行為(※2)の委託」を目的とする場合は、準委任型に該当します。

※1 法律行為とは、
それを行うことにより法的な権利が発生したり消滅したりする行為のことです。例えば、契約や遺言などがそれに当たります。

※2 事実行為とは、
法的な権利の発生・消滅を有しない行為になります。
例えば、システムの開発やITサービスは通常、法的な権利の発生や消滅を招く行為ではありませんので、法律行為とはなりません

委任契約(準委任契約)は、委託された法律行為(事実行為)を善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)をもって行えば債務の履行となります。

例えば、善管注意義務をもってコンサルタント業務を行っていれば、そのコンサルタントの成果がでなくとも契約違反になりません。

業務委託契約書はなぜ必要?

委託者・受託者間の認識齟齬を防ぐ

口頭での契約では証拠が残らないため、契約後に「言った言わない」などのトラブルが発生するおそれがあります。

そこで業務委託契約書を作成し、契約内容を明確することで、水掛け論となるトラブルを避けるようにします。

問題が起こった際の賠償範囲を規定

業務委託契約書には、損害賠償条項が設けられるのが一般的です。 業務委託契約書における損害賠償条項は、債務不履行時の損害賠償の範囲を定めるものです。

債務不履行とは、端的にいえば「契約違反」のことになります。 業務委託契約における債務不履行としては、以下のような事態が想定されます。

  • 受託者のミスが原因で、委託者に損害が生じた
  • 受託者の納品が納期に遅れた
  • 委託者が受託者の機密情報を流出させた

損害賠償条項で規定される損害賠償の範囲のパターンを、狭いものから順に並べると、以下のようになります。

  1. 債務不履行によって発生した損害を「通常損害に限り」賠償する
  2. 債務不履行によって発生した損害を「通常損害と予見可能な損害の範囲で」賠償する
  3. 民法では通常認められない損害項目(弁護士費用等)を列挙して賠償義務に含める。

業務委託契約では、債務不履行を起こす可能性は、委託者よりも受託者の方が高いのが一般的です。 そのため、受託者の場合は (1) で規定すれば、賠償範囲を有利にすることが出来ます。

業務委託契約書は委託者・受託者のどっちが作る?

業務委託契約書を作成していなければ、民法の規定をもとに進められことになります。 先ほども述べた通り、業務委託契約では、債務不履行を起こす可能性は、委託者よりも受託者の方が高いのが一般的です。

最近では、多様な働き方や副業の奨励などによる、サラリーマン個人事業主やフリーランスの方が増えているようです。 その意味では、個人事業主やフリーランスの方が、委託内容・賠償範囲を明確にすることで、自身を守ることにつながるかもしれません。

業務委託契約書を作成する上でのポイントは?

実際のビジネスは数多の契約類型がある

民法では、日常的に使われることが多い 13 種類の類型(贈与契約、賃貸借契約など)を、典型契約(有名契約)として定めていますが、 実際のビジネスでは、上記に属さない非典型契約(無名契約)による契約を行われる場面が多いのが実情です。

参考に、非典型契約(無名契約)の例を以下に示します。

  • 取引基本契約
  • 秘密保持契約(NDA)
  • 業務委託契約
  • ソフトウェア開発委託契約
  • OEM 契約
  • 派遣契約・人材紹介契約
  • ライセンス(使用許諾)契約
  • 販売代理店契約・販売仲介契約
  • M&A に関する契約
  • コンサルティング契約
  • 共同研究契約・共同出願契約
  • 合弁契約

そのため、委託内容に即して、契約内容を精査する必要があります。

最低限は規定したい必須項目

その上で、以下の項目は、業務委託契約書にて定めておくことで、トラブル時に身を守ることにつながります。

項目内容
業務内容受託者の役務内容を記載し、「何をするのか」を明確にします。
契約期間契約の開始日・終了日を定め、契約期間を明確にします。
委託料委託者から受託者へ払われる報酬を定めます。
支払方法銀行振込・電子決済サービスなどの利用や、支払期限を定めます。
検査契約完了時に委託者が実施する検査の期限や項目を定めます。
再委託受託者による再委託の可否を定めます。
守秘義務社内情報や顧客情報など、機密情報の取り扱いを定めます。
禁止事項競業避止規定(委託者顧客との直接取引禁止)など、禁則を定めます。
契約解除契約の解除を行う条件を定めます。
管轄裁判所どこの裁判所で裁判を行うかを定めます。遠隔地は避けるようにします。
反社会的勢力の排除反社会的勢力から不当要求又は業務妨害等の不当介入を受けた場合に備えます。
協議契約について疑義が生じた場合に協議にて解決を図る旨を記載します。

急ぎで業務委託契約書が必要な場合

急ぎで業務委託契約書が必要であれば、下記のリンクより、上記の内容で業務委託契約書の作成が可能です。

業務委託契約書作成

まとめ

業務委託契約書は、依頼内容や報酬、期間などを記載し、当事者間の認識齟齬を防ぐ重要な書類です。 フリーランスや個人事業主として仕事を受託する際は、忘れずに作成するようにしましょう。